シャントトラブルと治療
シャント狭窄の治療
シャント血管内が狭くなった場合、十分な血流量を得ることができなくなったり、シャント血管が詰まる場合があります。その場合、バルーン(風船)カテーテルで狭くなった部位を広げたり(PTA)、シャントを造り直す(シャント再建)必要があります。
シャント閉塞の治療
シャント血管が詰まった場合、血液透析ができなくなります。その場合、カテーテル手術で血栓(血の塊)を除去し、シャント血管に狭窄が認められればバルーンで拡張します。長時間経過した場合は外科的に血栓除去術を行う場合があります。
シャント瘤の治療
繰り返すシャント血管の穿刺などにより、シャント血管にコブができることがあります。大きいコブは破裂の危険もあり、コブの切除が必要となる場合があります。
静脈圧高血圧症
シャント静脈に血流をうっ滞させる病変が存在することで、静脈圧が慢性的に高くなっている状態です。血流がうっ滞するため、シャント肢が浮腫み、痛みや皮膚炎の原因になります。治療は、シャント血管のPTAや静脈結紮が必要となることがあります。
過剰血流シャント
シャントは血液透析に不可欠ですが、過剰の血流量は心臓に負担がかかります。シャント血流量が1000~1500ml/min以上、もしくは全心拍出量の20%以上を過剰血流シャントといいます。心不全、静脈圧高血圧症、シャント瘤、スティール症候群などの原因となります。治療はシャント血流量を制御する手術やシャント閉鎖が必要になります。
スティール症候群
シャントのある指の血流が悪くなり、指に冷感や痛み、紫色の変色を認め、重症になると指が壊死する場合があります。シャント血流によって、動脈血流がシャント静脈に取られてしまい(steal, スティール=盗まれる)、指先まで血液が行き届かず虚血になってしまうために起こります。治療はシャント血流制御、PTA、バイパス術などがですが、シャント閉鎖術が必要になる場合が多いです。
感染
慢性透析患者さんは免疫能の低下により易感染状態にあります。近年、糖尿病や高齢者の透析導入により人工血管を用いたシャントが増加し、感染例も増加しています。ブラッドアクセスの感染は敗血症へ進展し、時に致命的となりうるので、早急な対処が不可欠です。